初めての「対応方針報告書」
「『南海トラフ巨大地震』をめぐって”個々人に求められる自助減災行動メニュー”」を「南海トラフ対応方針報告書」が初めて示唆してくれました。
正式には「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応のあり方について」と名付けられたこの最終報告書は、(内閣府内に置かれている)中央防災会議の作業部会「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」主査の福和伸夫・名古屋大学教授から、2018年12月25日に山本順三防災担当相に手渡されたものです。
「臨時情報の発表」により対象住民は「自助減災行動」を求められることに
実は、「南海トラフ巨大地震の被害想定値」だけを2012年と2013年に詳細な積算根拠付きで公表したところ、
「最大想定『死者数』=約32万人、最大想定『避難所への避難者数』=約500万人、最大想定『避難所外避難者を含めた避難者総数』=約950万人」などとする「被害想定」は、
津波避難の必要性を認識している地域住民の皆さんに「警鐘を鳴らした」では済まない大きな「社会的ショック」を与え、「『発生直後に押し寄せる”津波”に飲み込まれて遭難死するだけだから何の対策もとらない』と割り切る住民をたくさん生み出した」という報道などが相次ぎました。
ですのでこの度、「『発生しうる被害想定値』の公表を『自助減災行動意欲の減退』につなげてしまった」という前歴を持つ中央防災会議から「『南海トラフ沿いで発生しうる”異常な現象”のイメージ』と『前兆を確認したときの対応方針』とについての現時点での検討結果」が公表された意味は大きく、
「『臨時情報の発表』があると、対象地域住民全員に対して『1週間の避難』か『1週間の警戒』の呼びかけがあり、置かれている状況にふさわしい対応が求められます」という趣旨のことが書かれている「対応方針報告書」の行間を素直に読んでいくと、
「前もって『避難・警戒期間中に消費する生活物資の備蓄』をはじめとする何らかの自助減災行動メニューを個々人で用意しておかないと(幸い『臨時情報の発表』以前に遭難しないで済んだ場合に、少なくとも1週間)つらい日々を迎えられることになりますよ」
というメッセージが浮かび上がってきますので、
この報告書が公表されたことで「『南海トラフ巨大地震発生の瞬間から、考えたくない異常な社会生活を経て、社会全体が落ち着きを取り戻すまでの歳月』について関心を持たれる方々を増やしていく方向」に社会を動かし始められたように思えます。
このページ群の構成
とはいえ、この報告書に書かれている「『異常な現象』のイメージ」と「『臨時情報の発表』の後の5パターンある住民生活イメージ」と「全5パターンに共通する『”いのち・暮らし”の守り方(=自助減災行動メニュー)』」とについての解説部分はもう少し詳しく書かれていた方が良かったように感じましたので、
以下に、「『南海トラフ対応方針報告書』の概要」、「『南海トラフ対応方針』検討の狙い」、「『発表対象地域』の状況は3つ、『その他地域』の状況も2つ」、「『臨時情報』が発表される前に被災してしまった場合」、「『半割れで”避難”臨時情報』が発表された場合」、「『一部割れで”警戒”臨時情報』が発表された場合」、「『ゆっくりすべりで”警戒”臨時情報』が発表された場合」、「対象地域外住民が『臨時情報』を受け取った場合」、「『”いのち・暮らし”の守り方』のまとめ」の順に、私見を記述してみました。
ご参考になることを少しでも書き込むことができていれば幸い、と思っています。