避難者総数をめぐる留意事項
11府県で「6人に一人以上」
南海トラフ巨大地震では40都府県中の11府県で人口比想定避難者総数の最大値が「6人に一人以上」になっています。
ですが、このことは「最大被害時(=最悪の場合)に11府県で6人に一人以上の人口比避難者総数が一挙に発生」という想定になっていることを意味しませんから、
避難所に行けなかった(あるいは避難所に入りきれなかった)避難者の一部がより軽度の被災都府県で親族・知人宅などに疎開者として受け入れてもらえる余地がありうることもうかがえます。
避難者全体にかかる大きな負担
ただ、改めて言及するまでもなく、震災時には多くの建物が壊れたり焼失し、多くの方が負傷をし、社会インフラが傷むことなどで多くの方が生活面で多大な困難に直面させられます。
が、そのような状況下で比較的軽度の被災都府県にあっても、
(1)自宅で安全に過ごせる見通しが無かったり飲食物が尽きてしまって避難所や疎開先に移られた方は制約の多い生活を強いられ、
(2)その中でも勤務先のある方は業務命令で出勤を求められなくてもお客様と社会のために無理を承知で出勤することになるなど、
かなりつらい思いをなさるものと推測されます。
また、「『避難所での収容能力には限りがあるので、健常者には自宅で避難生活ができるような態勢を作ろう』という意見がある」という報道に触れたことがありますが、
大震災時には、「人口比で読む東日本大震災被害」のページに記したように、
定説となっている「宮城県集計での人口比ピーク時避難所避難者数が全体で7人に一人」という数字でさえ、「大混乱の中で連絡のついた市町村が確認し報告してきた避難所避難者数」だけを数えたもので、結果的に「ピーク時となった2日前の仙台市の避難所避難者数」を反映していない不正確なデータなのですから、
公の施設への避難者数さえ正確に把握できない状況下でリアルタイムに集計を取りようもない「親族・知人宅などへの避難者」や「上下水道が破壊された孤立集落で自主的に避難所を設けてそこで生活している方々」などに救援の手が最低限の水準でも及ぶのかどうか大いに心配されるところです。
加えて「行政に携わる方々(とそのご家族)も被災者化している中でその方々が普段と同じレベルの活動を展開することは不可能」とも思えますので、
行政に携わる方々にはあらかじめ「かなりの準備をしておかないと巨大災害発生時には対応しきれないことが数々起き得る」という認識を持たれた上で想定避難者総数の多少に基づいた対策を進めておいていただきたい、と強く願っています。