熊本ゆかりの皆様へ(生活再建支援編)

九州7県のイメージ図

九州7県のイメージ図

「熊本地震の収束」は誤解

(2016年の)5月28日に「熊本県立美術館が、損傷を避けるために床に置いていた収蔵品を再び展示しても大丈夫と判断して、43日ぶりに入場再開となった」という報道があり、5月30日には「中谷防衛大臣が救援活動に従事している自衛隊への撤収命令を出した」という報道があったことなどによって、
日本中で多くの人々が「熊本地震は収束したのだ、(マスコミによる報道の対象になっていない大多数の)熊本県民には日常生活が戻ったのだ」という誤った認識を持たれてしまったのではないか、と危惧しています。

「阪神・淡路大震災」「新潟県中越地震」「東日本大震災」などで震度6弱以上の地震とそれに続く数多くの余震を体験した人々の場合は、体と心で覚えていますので、
「平成28年熊本地震」で被災された方々のいま置かれている状況をある程度理解できているはずですし、被災された方々がこれからの復興過程で恐らく直面させられることになる短期・中期・長期的な諸問題についてもある程度のイメージを持ち合わせているのでしょうが、
大災害の当事者になったことのない人々の場合には、「未知の領域のできごと」について判断するための材料がほとんど報道されないことによって、推理をしたくともそれができないからです。

伝わっていない『被災された方々のニーズ』」へ

伝わっていない「被災された方々のニーズ」

一方で、東日本大震災に遭遇した中・軽度の被災者の一人である私の当時の個人的な心境については、「被災者や被災企業は被災地でより辛い状況に置かれた方々との比較で『(自身や企業については)ご心配なく』的な発言をされている、という事実をよく理解させられた」に代表される表現で、このサイトの本編コンテンツと被災体験記ノート関連投稿記事の中に何回か書いてきていますが、
「平成28年熊本地震」で中度・軽度の被災をされた方々のご心境も同じようなものと類推できることに加えて、この方々が「近く身をもって知られることとなるはずの『未知の領域のできごと』を事前に予測して、今どういったことをやっておく必要があるのか」を把握できているとはとても思えませんので、
恐らく、「被災した地域にいろいろなかたちでかかわりを持ち今現在もお心の休まらない状況にいらっしゃる皆様のところに、被災された方々から『こういう側面で助けて欲しい』という声は届いていないし、
届かないから『知っていれば、そんなに負担になることじゃなかったし、役に立てたのに』という課題が未解決のまま数多く残されている」というのが、
被災からおよそ2か月が経過した現時点での最大の問題ではないだろうか、と考えています。

『3.11』後の個人的復旧作業は約5か月間」へ

「3.11」後の個人的復旧作業は約5か月間

ということで、今回の記事では、熊本地方にいろいろなかたちでかかわりを持っていらっしゃる皆様の中で「被災をされた方々への生活再建にかかわる(金銭面に限らない)支援余力」を持たれている方々を対象として、
「中度・軽度の被災者の生活再建支援に、手を差し伸べたり、知恵を提供されたり、遠隔地で必要な作業を代行してあげたりする際の検討素材となりうると思われることがら」
の例示を以下に試みます。

まず、「東日本大震災」時の(家屋の修繕や建て直しを伴なうことが結果的になかった)私自身の個人レベルの復旧作業の振り返りから始めますが、
それは「復旧作業(体験して分かった復旧作業の大変さ)」のページ群に記したように、
自宅内で11日間かかった「『食事』『睡眠空間』『情報』などを確保するための後片付け」、
会社内・自宅内で共に7週間程度かかった「日常生活などを取り戻すための後片付け」、
その後自宅内で3か月半かかった「震災再発時の安全度を高めるための追加の防災対策」、
家財地震保険の保険金の振り込みを待って本格化させた「震災で壊れた物品の買い直し」、
という四つのステージに分けられました。

もとよりこの体験は、「数多くあった中度・軽度の被災者の個人レベルの復旧作業の一事例」に過ぎませんし、家財地震保険の保険金を充てることができなければ「破損品の買い直し」についての展開もかなり大きく違っていたのでしょうけれども、
「東日本大震災」で被災して以来、時間が経過するにつれて様々な問題が顕在化してくるという環境の中で、「社会人としての務めを果たした残り時間から睡眠時間を除いたほとんどの時間を個人レベルの復旧作業へ注ぎ込む」という予想もしていなかった非常事態体験の期間は約5か月間に及びましたから、
「平成28年熊本地震」で中度・軽度の被災をされた方々も(今後新しい災害に見舞われることがなければ)同じような期間、「より重度な被災者の方々にほとんど支援の手を差し伸べられないこと」に申し訳なさを感じつつ周囲の人には(その方が自分よりもっと困っている可能性を排除できませんので)困っていることについて相談もできない、というご苦労の多い日々の中に身を置かれることになるものと推測しています。

『壊れた物品』をめぐっての支援」へ

「壊れた物品」をめぐっての支援

では、「この『個人レベルの復旧作業期間中にかかり続ける負荷』を縮減するために親類縁者の方々が提供できる有効な支援策にはどういったものがあるか」ということですが、
(私の場合には数多くいただいた電話・ファックス・メールとお送りいただいた物品のすべてを5年たっても不思議なぐらい鮮明に覚えていますしその1件1件に感謝の気持ちを抱いていますので、それで十分と言えなくもないのですけれども)、
「心身ともに疲れ果てている被災者側の判断能力は平常時と比べて低下している」ということが共通基盤のような形で存在していますし、
「『(技術革新の速さゆえに店頭から姿を消してしまっている長年使ったきた)壊れた物品』の代替品としてどういったものを買い直し対象品として選んだらよいか」あるいは「『(これまで使ってきた)壊れた物品』と同じものの中古品をどうやったらネットオークションなどで騙されることなく購入できるか」が分からないということもあるでしょうし、
もし(地震保険に入っていなかったなどの理由で)「壊れた物品を買い直すお金を用意できない」ということであれば、壊れずに残ったものだけを利用する生活でいくのか、「(代替え品の購入よりは安上がりになるタイプの)技術革新の成果物であるハードやソフトやサービス」を導入して補うのか、といったライフスタイルの変更を伴う選択も必要となってきます。

また、最近の物品修理は(大手家電販売店が間に入る場合も含めて)メーカーの修理センターに宅急便で送り修理完了後に宅急便で受け取るというスタイルになってきているところから、運送中の衝撃によるダメージを小さくするためにとくに精密機器を購入した際には「製品の入っていた箱と梱包材」を捨てずに保管しておく必要がありますので、こういったノウハウを含めて、
「被災地の外にいる」という地の利を生かして、周囲にいらっしゃる方の意見を聴取されたり、あるいはネット上にある情報を収集されて、被災をされた方々にお知恵を提供されるようなことがあれば、これがより望ましい支援策の第一になると思います。

『追加の防災対策』をめぐっての支援」へ

「追加の防災対策」をめぐっての支援

また、「散乱したり転倒した物品」を元の位置に戻したり段ボール箱などに仮収納する作業はすでに終わっているのでしょうが、台風対策や大雨対策に目配りを欠かせない熊本県の方々が「(これから起きるかもしれないより大きな被災に備えた)追加の地震・津波対策」を適切に行われているかについては一度チェックされておかれた方が良い部分です。

そのためには、東京23区役所サイトの防災ページ群の中で「説明の分かりやすさと閲覧性への配慮の際立った高さ」を私自身が2016年の1月下旬から2月中旬にかけて確認済みなのは板橋区品川区渋谷区江戸川区のものだけで残りの19区役所サイトの防災ページ群については様々な問題点を垣間見させられてきているのですが、
例えばこれら4つの区役所サイトの防災ページ群を閲覧された上で「ネット上にはこんなことが書かれているけれども対応はお済みですか?」とファックスやメールの送付で(ゆっくり答を出せるように)問いかけたり、
滋賀県庁では家を改造しないで身を守ってもらうために「個人木造住宅への耐震シェルター等の普及事業」を補助金付きでやっていますので、「こういった製品を導入してみることはいかがですか?」と問題提起をしてあげたりされるようなことができれば、これがより望ましい支援策の第二になると思います。

『飲料水や防災グッズ』をめぐっての支援」へ

「飲料水や防災グッズ」をめぐっての支援

さらに、「平成28年熊本地震についての『熊本県災害対策本部会議資料から読み取れる熊本市での被害結果』」と「東日本大震災のときの『仙台市での被害結果』」とを比較すると、(根拠となるデータは別の記事として掲げたいと思っていますけれども)、「揺れの恐怖度」は熊本市での方が上ですが、「生活面での苦痛度」は仙台市の方がはるかに上回っています。

私は、たまたま「平成28年熊本地震の『本震』発生の数分後にNHKのBSプレミアムの映画番組が中断され、東京のスタジオからの臨時ニュース番組に変わった直後に『(大きな余震の)緊急地震速報』を知らせるテロップが画面上方に出、そのアナウンスが始まった直後に次の『(大きな余震の)緊急地震速報』を知らせるテロップが画面上方に出るという緊迫の瞬間」を録画で見る機会があって、その際、「こういう状況でも街灯が点いているということは停電していないのだ」と不思議に思いましたが、
「阪神・淡路大震災」でも発災直後から通電火災が始まっているわけですし、「東日本大震災のときの仙台市のように『本震の発生と同時に100%停電』の方が普通のことではなかった」と、この熊本市内での深夜のライブ映像を見て初めて知ることとなりました。

このように、自分自身の被災体験は脳裏に焼き付いてしまいますので、「(関係された方々のご尽力によって)ライフラインが早期に復旧したこと」は本当に良いことでしたが、その半面で「飲料水や防災グッズの備蓄量はこの程度でよかったのだ」という誤った認識の下に(お金もかかることですから)不十分な再備蓄で済ませてしまう被災地の方がたくさん生まれるのではないか、という心配も率直に言って私の気持ちの中に残っています。

「『南海トラフ地震』や『首都直下地震』などの巨大災害が発生すれば(『公助』や『共助』でやれることには限界があり過ぎて『自助努力の蓄積量の多少』が被災後の運命を大きく左右することだけははっきりしていますが)『自助』で耐え忍ぶ期間がどの程度になるか」を事前に知ることはできませんので、
「その時」に備えてのご自身のためにもなる第一歩の「行動」として、上に記した東京都内の4つの区役所サイトの防災ページ群を閲覧されるなどの「学習」をされ、熊本の方とのやり取りの中で「もっと備蓄量を増やされてもよい」と思われた飲料水や防災グッズについては実際に「購入」してお送りし、
(今の宅急便システムは「配達員さんに対して申し訳なさを感じるぐらいの大きさと重さの物品」を上限値以下のものであれば気持ちよく扱ってくれますので、「自身が先に被災してしまった場合には宅急便の取り扱い再開直後に送ってくださいね」と書き添えるなどして)、被災地での震災再発時の安全性を高めて差し上げられたら、これがより望ましい支援策の第三になると思います。

「熊本ゆかりの皆様」に「可能な範囲で熊本県在住の方々にご支援の手を差し伸べていただければ」と、失礼を顧みずに現時点で思うところを書かせていただきました。お許しください。

追記事項

(投稿日:2016/06/08  更新日:2020/07/11)

なお、「いつ収束するか誰もわからない『コロナ禍』の中に身を置くことになってしまっていて、『切ないけれども今は令和2年7月豪雨で被災をされた方々への支援余力が無い』」という方もいらっしゃるものと推察しています。
が、「『南海トラフ地震についての臨時情報の発表』があったり『首都直下地震の突発』があったり『利根川水系での大量降雨に起因する都内ゼロメートル地帯からの避難勧告』があったりしたときには(『関東大震災』の後がそうであったように、遠隔地への疎開を含めて)大量の人々の大混乱を伴う分散避難行動の発生が容易に予想されますから、
「ゆかりのある地域の方々との『ご縁』は無理のない範囲で絶やさないようにされておかれること」がご自身とご家族が被災者となられたときのリスクヘッジにもなるものと考えます。
「熊本ゆかりの皆様に『どうか可能な範囲で熊本県在住の方々にご支援の手を差し伸べていただければ』と重ねて書いた背景」について付記をさせていただきました。