日向灘地震とNスペ「地震列島」

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(1/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(1/3)]

もくじ

「『日向灘地震』誘発ケース」の恐ろしさ

政府の中央防災会議は、2019年5月31日に、「『南海トラフ地震防災対策推進基本計画(2014年3月28日策定)』について5年ぶりの変更」を決定しました。

内閣府の「防災情報のページ」にある「南海トラフ地震防災対策推進基本計画の変更(概要)内の『主な修正項目(1)』」が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒) が発表された場合は」から始まっているところから、
当然のことながら、(本サイト内の「『南海トラフ”前兆”臨時情報』と”いのち・暮らし”の守り方」ページ群でご紹介している)、「いわゆる『半割れ』ケースでの臨時情報」に注目が集まっています。

が、「発表される『臨時情報』は<半割れ>ケースに限定されていない」という点については留意が必要でしょうし、
「想定外の巨大地震の予測につなげよう」と過去のパターンに無いものを研究されている先生方がいらっしゃることについても、敬意を表しつつ、留意されておかれる必要がありましょう。

ここでは、本サイト内の「2016年熊本地震とNスペ『地震列島』」で紹介対象とした「(熊本地震の11日前に放送された)NHKスペシャル『”地震列島” 見えてきた新たなリスク』」の取材対象となっていた3つの地震研究活動の一つに、
「(多様な起き方の一つとはいえ、『一度<揺れ>や<津波>に襲われた地域』が再び被害を受ける)『日向灘地震に誘発される南海トラフ巨大地震』についてのシュミレーション解析」が含まれていましたので、
「お役に立つことがあるかも」と、以下で「国立研究開発法人・海洋研究開発機構『地震津波予測研究開発センター』の堀 高峰(ほりたかね)センター長パート」についての意訳紹介を試みます。

「『堀 高峰センター長の研究活動』パート」の概要

「Nスペ『地震列島』」の男性と女性のナレーターは、おおむね次のように語りました。

南海トラフ巨大地震が繰り返し発生してきたことが知られています。その間隔はおよそ100~150年。最後に起きたのは70年前の昭和南海地震です。20~30年のうちにも次の巨大地震が起きると考えられています。
ところが、最新の研究から地震の発生を早める意外な要因が浮かび上がってきました。

研究者たちはプレートの詳細な姿を明らかにしてきました。
こうしたデータを基に研究している海洋研究開発機構の堀 高峰さんです。スーパーコンピューターを使って、将来どのような地震が起きるか、その予測に取り組んできました。

東日本大震災のときと同じように、南海トラフでもある地震に誘発されて巨大地震が起きるのではないか。堀さんはある海域に注目しました。そこは九州の南東、日向灘です。日向灘では数十年ごとにマグニチュード7程度の大きな地震が起きています。ここでの地震が、東北地方と同じように巨大地震を誘発する可能性を考えたのです。

その結果です。赤で示したのはプレートの境目に溜まっていくひずみです。ひずみが限界に達すると色が変わります。巨大地震の発生です。およそ1,000年の間にどのような地震が起きるかをシュミレーションすると、多くの場合、150年前後の間隔で巨大地震が発生する結果となりました。

その中に巨大地震の発生間隔が短くなる場合がありました。地震に誘発されるケースです。

まずここでマグニチュード7クラスの地震が起こります。日向灘でマグニチュード7.5程度の地震が発生。周辺に変化は現れません。

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(1/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(1/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(2/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(2/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(3/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[1年目(3/3)]

しかし、その4年後、隣接する四国沖の南海トラフでマグニチュード8.3の巨大地震が起きます。

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[3年目(1/1)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[3年目(1/1)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(1/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(1/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(2/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(2/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(3/3)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[4年目(3/3)]

さらに1年後、その東側でもマグニチュード8.1の巨大地震が起きます。

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[5年目(1/2)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[5年目(1/2)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[5年目(2/2)]

「日向灘地震」誘発ケースでの「ひずみ」の変化[5年目(2/2)]

シュミレーションでは、日向灘の地震に誘発されると、より短い間隔で巨大地震が発生。
150年前後だった発生間隔が半分程度になる、という結果になりました。

周辺の地震に誘発される地震は数年の間に連続して起きる恐れがあります。
一度「揺れ」や「津波」に襲われた地域が、再び被害を受ける可能性が見えてきたのです。

科学者たちはこれまでの考え方を根本から見直し始めています。
あらゆる可能性を排除せずに、次の地震に備えなければならない。想定外の巨大地震から学んだ教訓です。

巨大地震が懸念される南海トラフ地震。新たな地震計や水圧計が配置され、海底の変化をリアルタイムで観測できるようになりました。巨大地震のシュミレーションに取り組む堀高峰(ほりたかね)さん。わずかな変化も見逃さず地震の予測につなげようと、膨大なデータに向き合い続けています。

まとめ

「いわゆる<半割れ>ケースでの臨時情報」に注目が集まっている今回の修正ですけれども、
内閣府の「防災情報のページ」にある「『南海トラフ地震防災対策推進基本計画』新旧対照表」に直接あたってみると、「いろいろな変更点」が目に入ってきます。

が、最大の変更点は「(『半割れ』ケースに限らない)臨時情報」について、
「南海トラフの想定震源域及びその周辺で速報的に解析されたM6.8程度以上の地震が発生、またはプレート境界面で通常とは異なるゆっくりすべり等を観測した場合、大規模地震発生との関連性について調査を開始する南海トラフ地震臨時情報(調査中)が気象庁から発表される。」という規定と、
「国、地方公共団体等は、気象庁が『南海トラフ地震臨時情報(調査中)』『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)』『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)』を発表した場合においては、時間差を置いた複数の地震発生等に備えて、災害応急対策を実施する。」という趣旨の規定、
とを盛り込んだところにあります。

そして、気象庁は同じ2019年5月31日の午後3時から、同庁サイト「南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件」に記されたルールに基づいて、いつでも情報を発表できる運用体制に入っているのですけれども、
現在の段階は「『防災対策推進基本計画』を修正しただけ」というレベルなので、もし「2019年5月10日に発生した『マグニチュード6.3の日向灘地震』」が「3週間遅れの6月1日以降に『(より大きな傷跡を残す可能性がある)マグニチュード6.8の日向灘地震』として発生するような事態」につながっていけば、
「『南海トラフ地震臨時情報(調査中)』が発表された」というニュースに接したことで、日本国中に「『基本計画』の修正時点で想定されていない様々な行動」をとる人たちが出現し、何らかの社会的混乱のうねりが生じていくものと思われます。

本サイトの中に繰り返し記していますが、「『公助』と『共助』には限りがありすぎるので、『自助による防災・減災対策』を何らかの自然災害が発災する以前の段階でどれだけ手厚くできるか、が被災後の人生や生活の質を左右するのだろう」と私は考えています。
「『添付させていただいたイメージ群』が触媒のような役割を果たしてくれれば良いな」と強く思っております。

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