「エアコンの故障」で知った熱中症リスク

エアコン室外機周りの工事イメージ

エアコン室外機周りの工事イメージ

「熱中症患者数の抑制」は国民的な課題

ここのところ「最高気温が体温を超える危険な暑さ」を記録した自治体についての報道が相次いでいて、
「『危険な暑さ』と『日本ならではの湿度の高さ』に影響されて発生する熱中症患者数の増加をどう抑制するか」も、コロナ禍対策と並ぶ国民的な課題となっています。

繰り返される「特に高齢者は」のアナウンス

そして、当座の対応策を少しでも多くの方に伝えようと、NHKのニュースなどでは
「こまめな水分補給や休憩、室内での冷房使用、屋外ではできるだけ日ざしを避けるなどの対策をとり、ひき続き熱中症に警戒してください。特に高齢者は本人が気づかないうちに症状が悪化することがあります。周囲の人が冷房や扇風機を使うよう声をかけるようにしてください」
といったアナウンスが繰り返されてきています。

「働きかけ」の実効性には疑問符が

が、アナウンサーさんや高齢者の方の周りにいる人の中で「『熱中症による救急搬送を迫られる事態』がどのような条件の重なり合いの中で生まれるか」を現地で発生直後に見聞きされた方は圧倒的に少数派でしょうから、
「連日なされている熱中症予防の働きかけが、『周りにいらっしゃる大切な高齢者の方の身に異変が起きないようにするための適切な声がけ方法』についての十分な理解が存在しない中での、『詳しくはわからないけれども”火の用心”と呼び掛けて回ればやらないよりも防火対策になってくれるはず』といったレベルでのものにとどまってはいないか」と心配される構図は、
「自然災害をめぐっての『被災の瞬間までになされていることが望ましい自主防災対策』と『個々人(=個々の家庭)レベルで実際に行われている自主防災対策』との大きな差異」に類似したものであるように思われます。

エアコンの故障で『室温』と『湿度』はどう変化したか」へ

エアコンの故障で「室温」と「湿度」はどう変化したか

ところで、私も先日までは一般の方々と同じレベルの「熱中症予防対策についての認識」を持ち合わせた一市民に過ぎなかったのですけれども、
幸か不幸か2020年7月10日から8月4日まで26日間にも及ぶ「エアコン故障期間中の居住域内での環境激変」を経験したことによって、
東京消防庁作成のPDFファイル「夏本番前から熱中症予防対策を!!」に出てくる「熱中症の原因の一つが、高温と多湿です」という記述を実感をもって受け止められるレベルの市民へと大きく変わりました。

エアコン使用停止期間中は「室温」と「湿度」が大幅にアップ

室温と湿度との推移グラフ

「エアコン故障期間」を挟んでの室温と湿度との推移グラフ

「エアコン故障期間中の居住域内での環境激変」がどのようなものであったかは上に掲げた(クリックされると拡大視が可能な)図表から読み取っていただけるものと思いますけれども、
生のデータを「『故障前』期間」「『故障中』期間」「『故障後』期間」とに分けてまとめてみると、
(「私の自宅内の3か所で1年間に亘って起床時に毎日記録してきていた室温と湿度」と「自宅から直線距離で4キロのところにある仙台管区気象台での同時間帯の室温と湿度」ということになるのですが)、
「7月1日ー7月10日の自宅での平均室温は22~23℃で平均湿度は56~61%(気象台観測値は順に21℃95%)」、
「(エアコンが故障していた)7月11日ー8月4日の自宅での平均室温は26℃で平均湿度は72~78%(気象台観測値は順に20℃97%)」、
「8月5日ー8月16日の自宅での平均室温は26~28℃で平均湿度は58~61%(気象台観測値は順に26℃86%)」となっていますので、
私の自宅のように鉄筋コンクリート造りの集合住宅の一部であった場合には「エアコンの故障や使用停止」で「室温が外気温を大きく上回る状態」と「湿度が『除湿が望ましいとされる70パーセント水準』を上回る状態」とに変化していたことを明らかに読み取れます。

エアコン使用停止期間中の「室温」は「気象台での最高気温」とほぼ同じに

また、自宅所在地は「北日本」に地域分けされる仙台市内ですので、「仙台管区気象台の『7月1日ー7月10日の最高気温平均値は25℃』、『7月11日ー8月4日の最高気温平均値も25℃』、『8月5日ー8月16日の最高気温平均値は32℃』」との対比で考えてみると、
「『(エアコンが故障していた)7月11日ー8月4日の気象台での最高気温平均値(25℃)と自宅での平均室温(26℃)がほぼ同じ』という事実は、よく言われている『鉄筋コンクリート造り住宅の外壁と内壁には日中の外気温が蓄熱されていて、それが屋内に放出され続けるために明け方になっても室温が下がらない』というお話を裏付けるもの」と思えますし、
「もし『エアコンの故障』が終了していなければ、8月5日ー8月16日の『自宅での平均室温(26~28℃)』は『気象台での最高気温平均値(32℃)』とほぼ同じレベルまで上がっていたのではないか」と推測されます。

お勧めしたい二つのこと」へ

お勧めしたい二つのこと

と、ここまで仙台市内で収集できたデータに基づく記事を書いてきましたが、
読み進んでこられた方の中には「大切な高齢者の方が『危険な暑さを記録した自治体』で生活されている」あるいは「ご自身が『危険な暑さを記録した自治体』で生活されている」という方もいらっしゃると思えますので、
以下に今回の体験を通して得られた二つのお勧めを書き残しておきたいと思います。

「『過去の気象データ』を参照しての声がけ」の実行

一つ目は「大切な高齢者の方が『危険な暑さを記録した自治体』で生活されている」という場合で、
(「現地で体験しないと実際の状況は正しく把握できない」と多くの方が思われているとおりなのですけれども、次善の策として)、
大切な方に「寝苦しい夜が続いていませんか。『起きたら汗びっしょり』といったことはありませんか」と音声で問いかけて、「イエス」に類したお答えがあったときには、
気象庁の「過去の気象データ検索」を訪ねられると(宮城県内の場合は30数地点について表示されるのですが)前日分までの「各日の1時間ごとの気温」や「指定した年の各月の連日の最高気温と最低気温」などがわかりますので、
ご自身の生活実感やテレビでのニュース映像などと対比されて「おそらくこのような状況下に身を置かれているのだろう」という認識を作り上げられた上で、改めて「『冷房や扇風機の適切な使い方』についての声がけ」をなされてはいかがでしょう、というお勧めになります。

「『過去の気象データ』を共有しての行政への働きかけ」の実行

また二つ目は、「ご自身が『危険な暑さを記録した自治体』で生活されている方」という場合で、
(「すでに一部の自治体では『一定の条件を満たす方に、上限額を設定した上で、工事費込みのエアコン購入費助成』を始めている」というテレビ報道を目にしていますが)、
上に掲げた気象庁の「過去の気象データ検索」を訪ねられると(仙台市の場合は1990年4月1日分からになりますけれども)前日分までの「各日の1時間ごとの気温」や「指定した年の連続した各月の上・中・下旬の平均最高気温と平均最低気温」などがわかりますので、
後者のデータをダウンロードしてエクセルなどで一覧表化してみて「近年の異常気象の中で『この自治体は”エアコン無しでは暮らせない地域”に変化してしまっている』」と確認できたときには、
「過去の気象データの変化」を住民の方々で共有して、お住まいの自治体内での安全度・安心度を高める方向に誘導されてはいかがでしょう、というお勧めになります。

「暑さ寒さも彼岸まで」ですから「1か月後には熱中症対策の重要度がだいぶ低下している」のかもしれませんが、
「『熱中症』と『新型コロナ』の症状の類似性から熱中症患者への治療開始時期が遅れがち」としきりに報じられていることからすれば、「熱中症対策への要注意期間」はまだ1か月もあるということになります。
この一文が「この夏に危険な暑さを記録した自治体」にご縁を持たれるどなたかのお役に立ってくれることがあれば、強くと念じております。

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