「巨大津波」と「黒い津波」

黒い津波

黒い津波[引用元:NHK_PR「NHKスペシャル『”黒い津波”知られざる実像』」]

2019年3月3日放送の「NHKスペシャル『”黒い津波”知られざる実像』」は、「都市部の海岸地帯にいるときに津波発生警報の発令を知ったら、(ごく小さな有害物質粒子を含んだ泥水を飲み込んで窒息死したり、生き残っても重い肺炎にかかったりする可能性があるので)、何もかも捨てて高いところへ逃げなければだめだ」と警鐘を鳴らしてくれた、極めて重要な調査報道番組でした。

「NHKスペシャル『黒い津波』」の報道内容

その報道内容そのものについては、「NHK NEWS WEBスペシャルコンテンツ(スマホでは「NHKニュース・防災『トップページ』下部にある『お勧めコンテンツ』」に含まれる)『東日本大震災 あの日から8年』」内の「黒い津波 知られざる実像」に4点の動画と16点の静止画像を添えた詳細な記述がなされていますので、「是非ご参照を」とお勧めいたします。

が、「震災の翌日(2011年3月12日)に宮城県気仙沼市の魚市場内の水タンクに残されていた『黒い津波の水』を撹拌して4リットルのペットボトル内に収集し8年間密封保管してきた貴重な資料」を分析された先生方は、(「人々の不安心理を大きくするようなコメントは避けたい」と思われてのことと推測しましたが)、黒い津波の危険性について「可能性がある」とか「リスクがある」といった表現にとどめておられ、
それらは録画を2度見て「番組内でのナレーションなど」を準速記録的なメモとして書き留めた私が受けた印象と幾分異なるものですので、以下に「私にとっての報道内容」を書き残すことといたしました。

「黒い津波」の知られざる実像

「白い津波」が短時間で「黒い津波」に変化

まず、「東日本大震災」のときの振り返りから始めますが、被災時の記録映像の収集が進み、それらの放映が積み重ねられてきたことで、
高さ10メートルを超える「巨大津波」に襲われて壊滅的な打撃を受けた町があったことはもちろん、
(建物の1階部分が水没するレベルの)高さ4メートル程度の「大津波」に襲われて大打撃を受けた町があったこと、
さらには(ある条件下での個人的な打撃と解釈していますが)高さ1メートル前後の「津波」に襲われて低体温症になられた方があったこと、
などの情報を(実感は持てていないにしても)全国各地で多くの人々が共通して認識するようになっているのが現状なのだと思います。

ただ、「『巨大津波』や『大津波』に襲われた町の中には、青森県八戸市、岩手県宮古市・大船渡市、宮城県気仙沼市・塩釜市のように到来した『白い(=普通の)津波』が短時間で『黒い津波』に変化したことが被災時の記録映像に残されているところが含まれていた」という事実はこれまで多くの人々にあまり認識されておりませんでした。

「有害な海底のヘドロ」が町を破壊し人を飲み込んだ

そこでNHKでは、「白い(=普通の)津波」と「黒い津波」の違いを把握するために、保管してこられた方から提供を受けた「黒い津波の水」を津波研究の専門家の先生方に分析してもらったところ、次のようなことが分かった、としています。

(1)「黒い津波の水」の黒い部分は(通常の海水と違って)油・重金属といった海底にヘドロとして堆積していた有害物質を含んだ4マイクロメートル、1000分の1ミリ単位のごく小さな粒子だった。結果、ところによっては「町中が汚水タンクの中に水没したような事態」が起きた。

(2)「黒い津波の水」の重さは普通の海水比で10%重かったので、場所によっては普通の海水比で20%、25%、30%重い「黒い津波」が到来したところもあったものと推定される。
重い水は人や物を押し流す力が強くなっているので、「白い(=普通の)津波」よりも逃げる人を倒しやすく、普通の海水の場合は地面から50cmのところで70kgの力が働くから、普通の海水比で10%重い水の場合は膝の高さ程度であっても人は(泥の中にいるようなもので)転んだり流されてしまったものと推定される。

(3)再現実験での「壁にぶつかるときの力」は、「白い(=普通の)津波」が256kg重/㎡で、「(単純計算では重さの違いと同じ10%差=約280重/㎡になるはずの)黒い津波」は波が盛り上がるように進んだことで最大で556kg重/㎡ になった。波が盛り上がるかたちでぶつかるので2倍強い衝撃力を出した。

(4)「建物を浮かせる力(=浮力)」の実験では、「黒い津波」を18.5cm入れたところで建物に見立てた箱が浮き、「白い(=普通の)津波」はそうならなかった。
建物を「押す力」だけでなく「浮かせる力」も強まって、「『白い(=普通の)津波』では2~3mの浸水で浮く木造家屋」が映像を見ると1~1.5mの浸水で流され始めており、それが他の建物も押し流すことにつながった。

(5)この海底に堆積していたヘドロは「津波が陸地を襲いやすいように、入り組んだ地形の湾の中の狭くなったところで特に海底を削り取った結果」で、気仙沼市で実測してみると水深が2倍になったところがあったし、その先に位置する鹿折地区では水かさが津波到達から30秒で危険な水位に達していた。ということは、「津波到達から10~30秒で『黒い津波』から逃げられなくなる可能性がある」ということも意味している。

被災後も残る「粉塵による『津波肺』」

またNHKの独自取材では、「黒い津波」の影響について次のようなことが分かった、ともしています。

(1)検視にあたられた法医学者へのアンケートでは「統計上では『溺死が9割』となっているが、泥や砂の付いた遺体が検視時に多かった」という趣旨などの理由を挙げて「『黒い津波の影響あり』の回答」が8割あったし、300人以上の検視を行った先生からは「ヘドロのように重い水が気管をふさいで死者を増やした。泥を飲み込んだ窒息があったのではないか」という見解をお聞かせいただいた。

(2)汚れた水を飲み込んだことで、「津波肺」という重い肺炎にかかる人も相次いだ。大量の黒い水を飲み込んだことで、4マイクロメートル、1000分の1ミリ単位のごく小さな粒子が肺胞にまで入って、残り、炎症を起こした。肺炎治療は抗生物質の投与で普通は1か月の入院だが、3か月の入院になった方もいる。
「黒い津波」はさらに数か月間粉塵となって地上に残り、それを吸い込んだことで「津波肺」になった人まで生み出した。

「都市部の海岸地帯」では特に注意を

「巨大津波」「大津波」「津波」に襲われる可能性を持つ市区町村は全国各地に数多くありますし、「『白い(=普通の)津波』が到来したときにどのような事態が起きるか」は多くの皆さんが8年前の東日本大震災以来の報道で認識をなされておられる通りです。

が、今回の「黒い津波の水」を使っての調査報道で「全国各地に存在する『(川崎市を例に挙げての)都市部の海岸地帯で埋め立て地が点在していて海底にヘドロが堆積しているところ』と『(八戸市・宮古市・大船渡市・気仙沼市・塩釜市で撮影された映像付での)入り組んだ地形の湾や港の中の狭くなった部分の海底にヘドロが堆積しているところ』では『黒い津波リスク』が非常に高いという事実」が明らかになりました。

「有害物質を含むヘドロ」が膝の高さ程度まで来ただけでも生死にかかわるわけですし、生き残られても「津波肺」での闘病生活が待っているかもしれません。
「津波が来る前に逃げることを徹底され、未来の命を守る」上で「今回のNHK調査報道」をお生かしいただけることがあれば、と強く願っております。