貞観地震のころにも地震や噴火が頻発
一昨日(2013年9月22日)午後、テレビ朝日系列で「たけしの富士山大研究・大噴火20XX」という約1時間半の番組が放映されましたが、
「3.11」からおよそ5か月後(2011年8月16日)の日本経済新聞に掲載された東北学院大学・河野教授の「多賀城を大津波が襲った記録が残る貞観地震のころには地震や噴火が頻発したが、東日本大震災の前後にもよく似たことが起きていて、まだ起きていないのは富士山や鳥海山の噴火くらい」という趣旨の寄稿文のことがこの2年間ずっと頭を離れませんでしたので、
強い関心を持って視聴しました。
「番組内でのコメント事項」は次の7点
番組でコメントされていたことを要約すると、次のようになります。
- 東日本大震災の4日後に富士山頂の南4キロ、深さ14キロ、マグマだまりのわずか6キロ上で、最大震度6強の地震が起きたが、地震は割と富士山の噴火に関係する。
- 3.11の東日本大震災後、日本列島は大きく変身した。
- この100年間で東日本大震災を除いてマグニチュード9の地震が世界で5回あったが、そのすべてで3年以内に火山の噴火を伴ったという前例もある。
- ただ、火山の噴火は警報のようなものがあってから来るので、地震のように恐れる必要はない。
- 噴火には「火砕流」「火山灰」「噴石」「溶岩流」「土石流」「山体崩壊」という六つのバリエーションがあるが、富士山の噴火についてはそのすべてに備える必要がある。
- その中には「火山灰が噴火後2時間で東京に到達し雨のように降り注ぎ続けるケース」も想定されているので、住民は噴火への備えをしておく必要がある。
- 火山灰は細かいガラスの破片なので
「発電所のフィルターを詰まらせ停電につながる」
「浄水漕内に火山灰が入れば水道水の供給が止まる」
「火山灰を除去し終わるまで公共交通機関がストップする」
「物流がストップし食料品が販売されなくなる」
「目を傷めたり気管支を傷めたりしかねない」
等々の可能性を考慮して、「その日」に備えるべきだ。
ため息レベルの「自主防災対策の不十分さ」
ですが、上のようなコメントを受けてのスタジオ内の反応には、
ゲストの方から「うちの備蓄は家族5人で飲料水のペットボトル5本だけです」という発言があったりして、
「『被災地体験』の有無で備蓄への取り組み方が随分と違っているのだな」と強く思わされました。
また、番組では「首都機能マヒの中での自身と家族との生活防衛をどうしたらよいか」といった切り口で非常事態への備え方について語っていましたが、
「火山灰が降ってきたらできるだけ外出を控えて家の中にいましょう」で済むはずもなく、
出勤可能な人から「社会インフラ復旧のために」「職場業務の正常化のために」「先行して出勤している同僚・上司にかかっている負荷を減らすために」「お客様の不便を減らすために」といった想いでの職場復帰が(業務命令だからということではなく)始まるはずですので、
「『被災地体験』がないと『被災した産業・経済・社会と企業・組織人』というテーマには思いが及ばないのだな」とも思わされました。
(投稿日:2013/09/24 更新日:2020/07/09)
なお、内閣府内に事務局がある中央防災会議の「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」は、2020年4月7日に、富士山噴火をモデルケースにした「大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―」と題する報告書を公表しています。
そして、その中には「微量の降灰で鉄道の地上路線の運⾏が停⽌する」「雨が降っているときに3ミリ以上の降灰があると停電が発⽣する」等々の「主な影響」や
「『ステイホームのための備蓄』と『想定降灰地域外への避難』といった個人・家庭レベルで必要となってくる対策」が書き込まれています。
が、コロナ禍にも通じる「リスクの回避」と「産業・経済・社会活動の再開」とのバランスのとり方などについては触れていませんし、
「政治家や行政関係者が『緊張感を持って取り組んでいるはずの防災対策』の現状」を垣間見ることができますので、
お時間をおとりになれる方には「(PDFファイル1ページの)概略版」あるいは「(PDFファイル36ページの)本文」の閲覧をお勧めいたします。