96個の想定被害
人的被害と建物被害
内閣府に設置された中央防災会議が2012年8月29日に公表した「南海トラフ巨大地震の被害想定(リンク先:内閣府防災情報のページ『南海トラフ巨大地震の被害想定について(第一次報告)』)」は、想定対象が(「北海道」と「東北6県」を含まない)全国40都府県だけなのですけれども、「『東海地方大被災ケース』『近畿地方大被災ケース』『四国地方大被災ケース』『九州地方大被災ケース』」という4タイプの地震を想定対象にしています。
また、その各々について
強振動生成域が
「基本ケースの場合」か「陸側ケースの場合」か
の2シーン、
季節・時間帯・風速が
「冬の深夜に平均風速の場合」か「冬の深夜に秒速8mの風速の場合」か
「夏の昼に平均風速の場合」か「夏の昼に秒速8mの風速の場合」か
「冬の夕方に平均風速の場合」か「冬の夕方に秒速8mの風速の場合」か
の6シーン、
を組み合わせて12とおりの「建物被害」を計算しています。
さらに、この12シーンに、「津波避難」をめぐる
「(日々対策が進められて)早期避難者比率が高く避難の呼びかけが効果的に行われた場合」か、
「(明日にも発生して)早期避難者比率が低い場合」か
の2条件を加味して、24とおりの「人的被害」を計算しています。
避難者数と帰宅困難者数
また、中央防災会議が2013年3月18日に公表した「南海トラフ巨大地震の被害想定(リンク先:内閣府防災情報のページ『南海トラフ巨大地震の被害想定について(第二次報告 ~施設等の被害 [定量的な被害量]~)』)」は、
「東海地方大被災ケース」「近畿地方大被災ケース」「四国地方大被災ケース」「九州地方大被災ケース」という4タイプの地震について、
「強振動生成域が基本ケース」では「冬の深夜に平均風速の場合」、
「強振動生成域が陸側ケース」では「冬の夕方に秒速8mの風速の場合」
という2とおりの「避難者数」を推計しています。
さらに、「中京都市圏(岐阜県、愛知県、三重県)」と「京阪神都市圏(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)」については、全ケース共通で、平日の12時に発生した場合の「帰宅困難者数」を計算しています。
基本ケースと陸側ケース
なお、内閣府の中央防災会議が2013年5月28日に公表した「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)本文」に添付された「『別添資料1 南海トラフ巨大地震の地震像(リンク先:内閣府防災情報のページ[別添資料1 南海トラフ巨大地震の地震像])』内の『2.強震断層モデルと震度分布』」にある
「『基本ケース』と『陸側ケース』とについての説明」が一般の人には分かりにくいレベルのものとなっていますので、意訳を試みて、次のような説明に変えてみました。
「南海トラフ地震の多様性」
「南海トラフ地震」は、
海のプレートであるフィリピン海プレートが日本列島の下に沈み込んで行く際に(太平洋プレートにとっての日本海溝に相当する)南海トラフ軸のところで陸のプレート側に蓄積されたひずみを解消させるために繰り返し発生していますが、
震源となる断層面の破壊開始点や動く長さなどがこれまで様々に違ってきており、「近い将来どのようなかたちで発生するかは予測の範囲を超える」というのが現状です。「基本ケースの場合」
「基本ケース」は、
(東海地震、東南海地震、南海地震への備えを大地震対策としていた時代にも当然のこととして個別の大地震の想定震源域は設定されていたのですが)、
「陸のプレートの下に海のプレートであるフィリピン海プレートが沈み込み始めて間もなくの地点」にこれらを参考にして新たに設定された強振動生成域で発生する地震動「陸側ケースの場合」
「陸側ケース」は、
(「基本ケース」よりも、場所によっては列島の直下も含む、日本列島の陸域に近いところでの発生を意味しますが)、
「陸のプレートの下に海のプレートであるフィリピン海プレートが沈み込んでいく中で可能性がある範囲内で最も地下深い地点」に設定された強振動生成域で発生する地震動
東日本大震災時を下回る最大被害想定値に
4タイプの地震ケースについて最大24のシーンが想定されているので、栃木県についての最小値と最大値を採ってみると、
死者数は「わずか」、
負傷者数も「わずか」、
死者及び負傷者数も当然「わずか」、
全壊及び焼失建物数も「わずか」、
断水の影響を受けて最大となる地震発生から1週間後の避難所への避難者数は共通で県民約10人、
親族・知人宅などへの避難所外避難者を含めた避難者総数は共通で県民約30人
としています。
東日本大震災の際の栃木県の被害状況(リンク先:栃木県『地震による被害状況』)は、
死者数が4人、
負傷者数が113人、
全壊住宅数が261棟
でした。
また、東日本大震災の際の栃木県の避難状況(リンク先:栃木県議会『災害対策特別委員会(平成24年2月)』)は、
ピーク時の避難所への避難者数が9,530人
でした。
にもかかわらず、栃木県は県外から多くの避難者を受け入れ支援してくれた代表的な自治体の一つと感謝されていますが、このときと比較すると南海トラフ巨大地震の栃木県についての被害想定はかなり小さなものとなっています。
人口比で読むと40都府県総平均の数千分の一以下
中央防災会議が2012年8月29日と2013年3月18日に公表した「南海トラフ巨大地震の被害想定」にある被害想定値はすべて「約○人(棟)」か「わずか」を示す「-」になっています。
このままでは計算できませんので、便宜上「約」を無視し「わずか=0人」として、「栃木県の推計人口(リンク先:栃木県『栃木県毎月人口推計月報』)」は2013年4月1日現在で1,986,293人ですから、これを使って人口比で読むと、
死者数が0人なので計算できず、
負傷者数も0人なので計算できず、
死者及び負傷者数も当然0人なので計算できず、
避難所避難者数が共通で県民198,629人に一人、
避難者総数が共通で県民66,210人に一人
となり、
戸建て住宅も集合住宅も公共施設も商業施設も工場もある中での粗い計算ですが全壊及び焼失建物数も0棟なので計算できず
となります。
一方、北海道と東北6県を除く40都府県庁ホームページにある2013年4月1日現在の推計人口の合計は112,632,615人ですから、これを使って40都府県の総平均を人口比で読むと、
死者数が都府県民349人~3,520人に一人、
負傷者数が都府県民181人~445人に一人、
死者及び負傷者数が都府県民119人~395人に一人、
避難所避難者数が都府県民23人~47人に一人、
避難者総数が都府県民12人~26人に一人
となり、
全壊及び焼失建物数が都府県民47人~120人に一棟
となっていました。
南海トラフ地震が発生したときの栃木県での人口比の最大被害・最大避難時(=最悪の場合)想定値は、各々、40都府県総平均の数千分の一以下となっています。