「内閣府の首都直下地震被害想定」と東京五輪返上論
もくじ
- 心の中に残った「東京五輪返上論」
- さらなる懸念材料
- 想定被害の程度と変化率
- 7つの想定項目
心の中に残った「東京五輪返上論」
(2015年の)6月30日に投稿した「ダウンタウンなう『今、首都直下地震が起きたら』を見て」をまとめる作業中に、
同番組内で「地震・火山の防災・危機管理のスペシャリスト」として発言と助言をされていた渡辺実先生がニュースサイトの『SankeiBiz』に「首都直下地震の新被害想定」と題する一文を寄稿されていることを知りました。
と同時に、その締めくくり部分の、
という、危機感あふれる記述が強く心の中に残りました。「(2013年12月に中央防災会議は死者数などが前回を大きく上回る『首都直下地震の新しい被害想定』を公表したが)、30年間発生確率70%と算出されている首都直下地震被害想定にリアリティーを持っているのであれば、本気で首都機能の移転・分散を再び検討することが必要であり、2020年東京五輪誘致も、その返上も含めた相当な覚悟をもたなければならないのではないだろうか。」
「さらなる懸念材料」へ
さらなる懸念材料
現実問題としては、日本国内で巨大災害が発生するなどして「五輪開催どころではないね」という国際世論が形成されないかぎり一方的な「返上」は不可能だと思われますけれども、
心配なのは
(1)ピークとなる2020年の東京オリンピック開会式(7月24日)から東京パラリンピック閉会式(9月6日)までだけでなく、その前の5年の間は限られたマスメディアの報道可能時間と報道可能紙面の中で(東京五輪関連ニュースの割合が増える分だけ)「巨大災害への備え」に関係する報道量が減少すること、と
(2)誘致活動の段階から「日本は安全な国」という情報を発信し続けているうちに「オリンピックが終わるまでは巨大災害は起きない」という根拠のない楽観論が人々の心の中に定着してしまわないか、
という2点です。
「想定被害の程度と変化率」へ
想定被害の程度と変化率
この「東日本大震災被災体験記」サイトでは、
2013年12月に公表された内閣府内に事務局がある中央防災会議の「首都直下地震の被害想定報告」が、
2012年8月(第1次)と2013年3月(第2次)に公表された中央防災会議の「南海トラフ巨大地震の被害想定報告」が東北6県を除く40都府県での人的被害と建物被害のデータをケース別に示していたのとは対照的に、
主たる検討対象の「都心南部直下地震」とそれに準ずる「大正関東地震タイプの地震」での東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県を中心とする地域での全体データ提示を基本としているいわば軽量のものであるところから、
これまで紹介を避けてきていましたけれども、いい機会ですので、
(1)前回報告(2005年)と今回報告(2013年)では「内閣府の首都直下地震被害想定」がどのように変化したのか、
(2)今回の報告内容を人口比で読むとどの程度の被害想定になっているのか、
を以下にご紹介していきたいと思います。
「7つの想定項目」へ
7つの想定項目
なお、私にとっては「『断水・停電等の影響もあり、在宅者が避難所に移動することにより、避難所避難者数は多くなっていく。(中略)居住地域に住むことができなくなった人が、遠隔地の身寄りや他地域の公営住宅等に広域的に避難する(引用元:中央防災会議「最終報告別添資料2<施設等の被害の様相>7ページ」)』ことで、被災2週間後にピーク時避難者総数が約720万人(1都3県推計人口の5人に一人)になる」という想定が一番ショッキングな部分でしたが、
内閣府の報告書にある被害想定について「死者数」「負傷者数」「全壊・焼失建物棟数」「避難所への避難者数」「避難者総数」「帰宅困難者数」「エレベーター閉じ込め者数」の順に記述していきます。