身をもって知った自主防災の大切さ

イントロ映像と出典データへの疑問

もくじ

「速報内容」と「出典作成時期の古さ」について

なお、第2パートのシミュレーション映像とその上に付された出典説明とを見聞きし、「(平成23年3月11日に発生した)東日本大震災のときにはこんなタッチの速報は出なかったけれども?」という疑問と、
「その6年も前に内閣府が発表した(東日本大震災のときに得られた新しい知見を反映させていない)データを、平成25年12月に発表した想定被害予測もあるのに、敢えてなぜ使っているのだろう?」という疑問とを持つようになったので、
前者については当時のことなどを振り返り、後者についてはネット上にある資料を調べてみました。

被災者は『映像のような地震速報』を耳にできない?」へ

被災者は「映像のような地震速報」を耳にできない?

結果、分かった第一のことは、
「巨大地震が起きたときに、被災地の放送局は非常電源を使って広域停電の中でも、『気象庁が発表した地震のあらまし』を伝え、その中に『津波への警戒の必要性』が含まれていれば『避難行動の呼びかけ』を懸命に繰り返す。その間は、『減災優先』で、各地の震度について列挙していくような通常の地震速報的報道はしない。

また、(阪神・淡路大震災のとき私はたまたま発生直後にテレビをつけ、NHK神戸放送局前に立つ記者さんの『目の前の道路に電柱が横倒しになっています。相当大きな被害が発生したものと思われます』という趣旨のレポートを見聞きした記憶があるのですけれども)、
報道関係者が取材のために拠点からすぐに出動できるかどうかについては疑問が残るところですし、
そもそも官庁・自治体などが速報を構成する諸情報について上部に伝える体制を被災直後の混乱の中で構築し各メディアに提供できるとも思えないので、恐らく上のような『速報内容』の放送はしたくてもできない。

一方、被災者側でも、家族と親類縁者の方々との連絡・通信が最優先事項となりますから、『スマホや携帯電話の電池切れの回避』を考えると、自宅や被災時の集合約束場所などにたどりつくまでは放送の受信を抑制する心理が働くはずで、『何が起きつつあるのか』を知ろうとするゆとりがあまりない」といったことから、

「被災地の人がシミュレーション映像のようなかたちで『地震の速報』を耳にするというケースはあまり考えにくい」ということでした。

『出典データのつまみ食い』になってはいないか?」へ

「出典データのつまみ食い」になってはいないか?

「見込まれる避難所生活者数への言及」もあった方が良かったのでは

また、分かった第二のことは、
出典と明記された「平成17年度 内閣府が発表したデータ」は、内閣府の中央防災会議が平成17年7月に発表した「首都直下地震対策専門調査会報告」を指すものと思われますが、

そこに書かれていることを要約すると
「首都直下の検討対象として東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県を中心とする地域で発生する18タイプの地震像を選定し、マグニチュード7.3の『東京湾北部地震』を検討の中心となる地震と考えることとした。」
「被害予測の最悪のケースは
『死者数=約1万1000人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『負傷者数=約21万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『揺れによる建物の全壊数=約15万棟』
『液状化による建物の全壊数=約3万3000棟』
『急傾斜地崩壊による建物の全壊数=約1万2000棟』
『火災延焼による焼失棟数=約65万棟(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『初日の避難所生活者数=約460万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『4日後の避難所生活者数=約390万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『1ヶ月後の避難所生活者数=約270万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『初日の避難者数(避難所生活者数+疎開者数)=約700万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『4日後の避難者数(避難所生活者数+疎開者数)=約600万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『1ヶ月後の避難者数(避難所生活者数+疎開者数)=約410万人(発生時刻:夕方18時、風速:関東大震災と同条件の15m/s)
『自力脱出困難者数=約5万6000人(発生時刻:朝5時)
『帰宅困難者数=約650万人(発生時刻:昼12時)
である。」ということですので、

シミュレーション映像に付けられた男性アナウンサーさんの声で引用していた「平成17年度 内閣府が発表したデータ」は「『マグニチュード7.9の地震速報付きシミュレーション映像』に『内閣府によるマグニチュード7.3の地震の想定被害予測』の一部をつまみ食い的に引用したものだった」ということでした。