「薬の個人備蓄」のお勧め

個人備蓄薬のイメージ

個人備蓄薬のイメージ

被災地全域での「診療と薬剤の供給抑制」

「東日本大震災から2年半」にあたる日の前日(2013年9月10日)、NHKのニュース番組「おはよう日本」は「大震災時の薬の備蓄と薬剤師さんの確保問題」を取り上げていました。

内容的には
「大震災時に他の病院・医院・クリニックの患者さんが、薬を求めて、行ける範囲にある病院に殺到した」
「行政は薬の備蓄に取り組んでいたけれども、足りなくなった薬もあればそうならなかった薬もあったので、いま備蓄対象薬の見直しが行われている」
「(東日本大震災のときには『ガソリン不足で薬の物流が止まってしまった』という大問題があったわけですが、それには触れずに)、どこの病院でどれだけ薬が不足しているかを把握できなかったので、緊急連絡網の構築が進められている」
「区内で働いている薬剤師さんの4割が出勤できない可能性があるので、薬剤師免許をタンスの中に入れている方々に大震災時に力を貸してもらえるよう体制づくりに取り組んでいる自治体もある」といったものでしたが、
「なぜ薬の個人備蓄の勧めに触れないのだろう」と不思議に思わされました。

東日本大震災のときには『個人備蓄の薬』で対応」へ

東日本大震災のときには「個人備蓄の薬」で対応

たまたま先週(2013年9月5日)、恐らく一時的な通院で済むはずのお医者様のところで、何らかの作業ミスから2週間分の個人備蓄に相当する薬の投与があったのですが、
「いちげんさん」的な患者の一人としては、お医者様とスタッフの方々の考え方が分からないので、「いつ、どのようなかたちで『個人備蓄用にもう1週間分多くお薬を』と申し出たらよいのだろう」と迷っていたところだっただけに、大変うれしい「作業ミス」でした。

というのも、東日本大震災のときに、長年(4週間に1度のペースで)お世話になってきていたクリニックが被災して、かかりつけ医の先生から
「『建物内に散乱した物品の整理整頓』と『建物そのものと検査機器などの損傷への対応』に追われていることと、隣接する薬局では『散乱した物品の整理整頓』に加えて『薬の在庫切れが多発していて、再入荷の見通しもたたない』ところから、来院された患者さんには『やれる範囲での対応』をしています。
幸い自宅の方の損害は軽微なので帰宅すると息抜きが少しできるのですが、このような状況ですので『生活の質の維持と成人病の予防』程度の人には事態がもう少し平静化してからの来院をお願いしたいです」
という打ち明け話が電話であり、結果的に「3.11」から3週間後にあたる(予定より2週間遅れの)次の受診・投薬日まで個人備蓄の薬で対応せざるを得なかったという経験があってのことでした。

巨大災害発生時には『診療と薬剤の供給抑制』が」へ

巨大災害発生時には「診療と薬剤の供給抑制」が

「『防災対策(防災ノウハウと防災マインド)』のページ群」内の「地震への備え」のページ群に記したように多くの防災サイトや防災書籍が「『非常持ち出し品の用意』も必要で、その中に『薬』も忘れずに入れて」と書いていますし、
「薬局への『お薬手帳』の提示」が制度化された今は「行ける範囲にある病院・医院・クリニックに薬を求めて行く場合を考えて、『お薬手帳』も忘れずに入れて」と付言しているものもあります。

ですが、巨大災害が発生すれば、大病院が重度の負傷者用のベッドを確保するために入院中の患者さんに説き伏せ帰宅してもらったり、医院・クリニックが建物の傷みやスタッフの通勤難で閉院になったり、薬局が在庫切れの薬の提供を中止するなど、「被災地全域での『診療と薬剤の供給抑制』」を誘発することは目に見えていますし、
「『個人レベルの復旧作業』のページ群」内の「自宅内での緊急的な後片付け」のページに記したように、「堆積した散乱物の中からかかりつけ医の先生に処方していただいていた薬を探し出す作業」は結構大変でしたので、「処方薬の一部は絶対に堆積物化しない場所に置いておく必要性があること」については身をもって体験させられたところです。

『薬を手元に置いておきたい』とぜひお申し出を」へ

「薬を手元に置いておきたい」とぜひお申し出を

そこで、私の場合は、「災害時に備えて薬を手元に置いておきたいので」と言い添えてお願いし、体調によって服薬量を減らした際とかかりつけ医の先生の学会参加に伴う臨時休診で次の受診・投薬日までの間隔がイレギュラー化した際に、これまでと同量の「薬」を出してもらうことの積み重ねで常に4~5週間分の備蓄量を確保し、その一部を「家財が転倒・散乱しても絶対に堆積物化しない場所」に置くようにしています。

通院先の医師の方がどのように判断されるか分かりませんけれども、
「災害時に備えて数週間分の薬を手元に置いておきたいのですが」と申し出られる機会を探されることを、体験を踏まえて強くお勧めいたします。

追記事項

(投稿日:2013/09/10  更新日:2020/07/02)

なお、個人備蓄したお薬があると「『風邪気味なのでその中のこれとこれを服用してもよろしいですか』とかかりつけ医の先生のクリニックに電話を入れて指示を仰ぎ、服用した場合には次回受診時に費消した分量を処方してもらって備蓄に充てる」といった合理的なサイクルを回すことができるようになります。
とりわけ、現在のように「『風邪気味』が新型コロナウィルスに感染した結果としての症状である可能性を排除できない社会」においては、感染拡大の当事者にならないためにも、常にこのサイクルを回せるような態勢を整えておかれることが望ましいと思えますことも付記をさせていただきます。